北陸数論セミナー過去の記録(2021年度)

第262回 (2022年2月7日(月),18:15~,金沢大学サテライトプラザ)
講演
千田雅隆 氏(東京電機大学)
講演題目
Katzの $p$ 進 $L$ 関数に対する例外零点予想について
概要
Buyukbodukと坂本はCM体上の環類指標に対するKatzの $p$ 進 $L$ 関数の $s=0$ での微分値に関する予想を定式化し,Rubin-Stark元が存在するという仮定の下でこの公式が成り立つことを示している.今回の講演ではCM保型形式と非CM保型形式の間の合同を用いた虚二次体の場合の予想の証明について紹介する.
この手法はDasgupta-Kakde-VentulloによるGross-Stark予想の証明の手法のある種の類似及び一般化と捉えることもできる.さらに,この公式に現れる不変量がBenoisによって定義された $L$ 不変量に一致することも証明できたので,その結果についても紹介したい.(台湾・中央研究院のMing-Lun Hsieh氏との共同研究)
第261回 (2021年12月2日(木),18:15~,金沢大学サテライトプラザ)
講演
加藤正輝 氏(富山高専)
講演題目
超幾何函数の2-パラメータ変形の満たす$q$-差分方程式について
概要
超幾何函数 ${}_{r+1}F_{r}$ は, 多重対数函数の適当な和の母函数で表されることが知られている. この表示において, 多重対数函数をその2-パラメータ変形($q$-類似の$p$-変形)に置き換えることにより, 超幾何函数の2-パラメータ変形$\Phi_j(a;p,q)$を構成することができる. 本講演では, $\Phi_j(a;p,q)$ の満たす$q$-差分方程式が, 摂動法と従属変数のゲージ変換, 多次元底つき超幾何級数に対するEuler変換公式 (Kajihara-Noumiの双対変換公式)を用いて解くことができることを紹介する.
第260回 (2021年11月18日(木),18:15~,金沢大学サテライトプラザ)
講演
地引芳紀 氏(学習院大学)
講演題目
通常連分数と偶数連分数の間の変換について
概要
連分数で部分商がすべて自然数であるものを通常連分数と呼びます。また部分商がすべて(正とは限らない)偶数であるものを偶数連分数と呼びます。
本講演では、通常連分数と偶数連分数の間の変換について取り扱います。特にこの変換によって、純循環通常連分数を偶数連分数に変換すると純循環に、逆に純循環偶数連分数を通常連分数に変換すると(純循環とは限らない)循環になることについて具体例を用いながら紹介します。
過去にKraaikampとLopes によって通常連分数と偶数連分数の間の変換について述べられたのですが、本講演で扱う偶数連分数と彼らの扱った偶数連分数とでは少し形式が異なります。
第259回 (2021年11月4日(木),18:15~,金沢大学サテライトプラザ)
講演
松村朋直 氏(金沢大学)
講演題目
Fano多面体が定めるK3曲面のミラー対称性について
概要
ミラー対称性はカラビ・ヤウ多様体における現象であり, 主に幾何学の分野で研究されている. 2次元の場合であるK3曲面においては2-コホモロジー群が定める2次形式を用いて記述することができるとDolgachevは予想した.今回はFano多面体が定義するK3曲面について扱う.この場合のK3曲面には1変数有理関数体上の楕円曲線の構造が入る.これを利用しMordell-Weil格子の理論と偶格子の理論を用いて2次形式を調べることにより,このK3曲面においてDolgachevの予想が正しいことを証明する.
第258回 (2021年10月21日(木),18:15~,金沢大学サテライトプラザ)
金沢整数論オータムワークショップ 2021」併催
講演
越川皓永 氏(京都大学)
講演題目
ユニタリ志村多様体のコホモロジー消滅定理
概要
CaraianiとScholzeにより数年前に証明されたユニタリ志村多様体の捩れ係数コホモロジーに関する消滅定理は保型性の理論の進展において重要な役割を果たしている。講演ではまずこれらを概観する。その後、消滅定理について講演者の行った研究を紹介する。
第257回 (2021年7月15日(木),18:15~,金沢大学サテライトプラザ)
講演
木村巌 氏(富山大学)
講演題目
【論文紹介】S. Dasgupta, Computations of elliptic units for real quadratic fields
概要
S. Dasgupta, Computations of elliptic units for real quadratic field, Canad. J. Math, 59(3), 2007を紹介する. この論文は,H. Darmon, S. Dasgupta(Ann. of Math. 163(1), 2006)により提案された「実2次体の楕円単数」を具体的に計算するアルゴリズムを解説し,実例を挙げたものである.
第256回 (2021年6月17日(木),18:15~,金沢大学サテライトプラザ)
講演
高井勇輝 氏(金沢工業大学)
講演題目
QM を持つ有限体上のアーベル多様体の自己準同型環の構造
概要
志村曲線の有理点の存在, 非存在に関する問題は, そのモジュライ解釈を通じて, ある種の自己準同型環の構造を持つアーベル多様体の存在, 非存在に関する問題に帰着できることがある.
今回は, 有限体上のアーベル多様体がCM体上の四元数環で QM を持つ場合に, その自己準同型環がどのような制約を受けるか, に着目する. 講演では, 有理点問題との関連性の概説から始め, 上記の問題に関して, これまでに得られている結果について解説する. 本講演の内容は, 新井啓介氏(東京電機大)との共同研究である.
第255回 (2021年4月22日(木),18:15~,金沢大学サテライトプラザ)
講演
蔡 園青 氏(金沢大学)
講演題目
古典群のBrylinski-Deligne K2拡張のdoubling法について
概要
1980年代に、Piatetski-ShapiroとRallisは、Whittaker模型に依存しない古典群のRankin-Selberg積分を発見した。これはdoubling法と呼ばれる。これは、テータリフトの内積に関するRallisの研究により得られたものである。
最近、古典群のテンソル積L関数(Friedberg、Ginzburg及びKaplanとの共同研究)と斜交群のcovering群のテンソル積L関数(Kaplan)を表すRankin-Selberg積分が発見された。これらは、doubling法の一般化と見なすことができる。本講演では、古典群のBrylinski-Deligne K2拡張のdoubling法について紹介する。
第254回 (2021年4月8日(木),18:15~,金沢大学サテライトプラザ)
講演
木村巌氏(富山大学)
講演題目
虚Abel関数体の相対類数の漸近挙動について
概要
本講演では,虚Abel関数体の相対類数が,相対種数を無限に飛ばしたときにどのように振る舞うかについての予想を定式化し,特に素冪導手をもつ円分関数体の部分体となる族について,初等的な証明を与える.
本講演の内容は,冨岡佳史氏(富山大学大学院理工学教育部修士課程修了)との共同研究に基づく.また,日本数学会2021年度年会での報告とほぼ同じである.

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