北陸数論セミナー過去の記録(平成30年度・2018年度)

第229回 (平成31年2月21日(木)18:15~)
講演
伊藤剛司(千葉工業大学)
講演題目
虚2次体上の反円分的 $\mathbb{Z}_3$ 拡大の中間体上の $q$ 外不分岐なアーベル $3$ 拡大について
概要
虚2次体上の反円分的 $\mathbb{Z}_p$ 拡大における「馴分岐岩澤加群」の構造についての先行研究に 関連する結果が得られたので報告する。
具体的には、$p=3$ で $q$ を $3$ とは異なる素数とするとき、反円分的 $\mathbb{Z}_3$ 拡大のinitial layer上の最大 $q$ 外不分岐アーベル $3$ 拡大、最大 $q$ 外不分岐 $3$ 分解アーベル $3$ 拡大のガロア群の構造についての結果を得ることが出来た。
また、この結果の応用として、実例計算に関する話題についても述べる。
第228回 (平成30年12月20日(木)18:15~)
講演
石塚裕大(京都大学)
講演題目
平面三次曲線の変曲点の局所大域性について
概要
なめらかな平面三次曲線において、そこでの接線が曲線と三重に接する点を変曲点と呼ぶ。これらの変曲点は平面三次曲線において基本的な構造であり、たとえば Bhargava—Shankar の三元三次形式の研究においても重要な役割を果たす。
本講演では伊藤哲史氏(京都大学)との共同研究で得られた、変曲点が満たす局所大域性についての結果を紹介する。またそれらの発展や、関連する話題についても時間が許せばお話ししたい。
第227回 (平成30年12月6日(木)18:15~)
講演
永野中行(金沢大学)
講演題目
Kneser 条件を満たす格子の保型形式のK3曲面の周期を用いた構成
概要
K3曲面は楕円曲線の2次元の類似です。
K3曲面の逆周期写像はIV型有界対称領域上の保型形式と見做すことができますが、これは楕円曲線の逆周期写像が上半平面上の楕円モジュラー形式を定めるという古典的な結果の自然な拡張と考えられます。
今回は超越格子がKneser 条件という二次形式の整数論的な条件を持つ場合に格子偏極K3曲面を具体的に書き出し、その逆周期写像が定める保型形式の環の構造を紹介します。
第226回 (平成30年11月22日(木)18:15~)
講演
植木潤(東京電機大学数学系列)
講演題目
Chebotarev link is stably generic
概要
素数と結び目、代数体と3次元多様体の類似に基づく「数論的位相幾何学」の研究において、「代数体の素イデアル全体の、3次元多様体における類似物は何か?」という問題は根本的である。
講演者は新甫洋史氏との共著 [NiiboUeki2018] においてvery admissible linkという候補を構成し、局所理論を束ねて大域理論を記述するイデール的類体論を3次元多様体上で実現した。三原朋樹氏はそこにコホモロジー的な解釈を与え、また射類群の議論に適合するように対象を改良してstably generic linkなる候補を提案した [Mihara2018]。一方でC. T. McMullen氏は、3次元多様体上の位相混合な擬Anosov流に対し、長さで順序付けられた閉軌道族が、B. Mazur氏の意味[Mazur2012]でChebotarev密度定理の類似を満たすことを示していた [McMullen2013]。
例えば8の字結び目(あるいはWhitehead linkやBorromean ringsなどのファイバー双曲絡み目)から得られるthe planetary link $\mathcal{K}$ は、Thurstonの分類定理からChebotarev密度定理を満たす。さらに、[Ghrist1993]の普遍テンプレートの理論によると、この $\mathcal{K}$ は、全ての絡み目(のイソトピー類)を部分絡み目として含むという。
本講演では、可算無限絡み目の条件を比較し、McMullen氏の意味でChebotarevならば三原氏の意味でstably genericであることを示す。また、そこから開ける展望について解説する。(加えて、具体例に関する結果も幾つか紹介したい。)
第225回 (平成30年11月8日(木)18:15~)
講演
石川秀明(富山大学)
講演題目
ディリクレの $L$ 関数の $n$ 次導関数と、そこから生じる新たなディリクレ級数の解析的性質について
概要
ディリクレの $L$ 関数 $L(s,\chi)$ の挙動は、等差数列中の素数定理や二次体の類数と密接に関係する。それゆえ古くから、その性質が調べられてきた。
今回は、その $n$ 次導関数 $L^{(n)}(s,\chi)$ について注目する。$L^{(n)}(s,\chi)$ の $n$ を形式的に連続変数で取りかえ、その結果生じる新たなディリクレ級数を考える。そのディリクレ級数の平均挙動について、考察している内容を報告したい。
第224回 (平成30年10月25日(木)18:15~)
講演
大浦 学(金沢大学)
講演題目
Eisenstein級数の組合せ論的類似
概要
1993年ごろまでに、一般種数のモジュラー形式、ある有限群の不変式、符号理論との関連ははっきり捉えられていました。Eisenstein級数はモジュラー形式の重要な例となっていますが、組合せ論側にそれに対応するものが欠けていたように思われます。この講演では、それを埋める試みについてお話ししたいと思います。
第223回 (平成30年10月11日(木)18:15~)
講演
山下浩(金沢大学)
講演題目
実2次体のアーベル拡大におけるレオポルト予想について
概要
有限群の表現をガロア群に応用したレオポルト予想の研究はEmsalem-Kisilevsky-Wales (J.N.T., 1984),Jaulennt(J.N.T., 1985)に始まり,単数群を $p$ 半局所的に埋め込んだときに異なる単純成分から $1$ 個ずつが消えないで残ることは証明されているが,同型な単純成分が複数あった場合については明確になっていない。これについて実2次体のアーベル拡大のガロア群の場合に,非常に特殊な条件を仮定すれば同型な単純成分が単射的に埋め込まれることを示す。
第222回 (平成30年9月7日(金)17:00~)
2講演あります.
講演
岡野凌大(東京理科大学)
講演題目
合同条件付きの2元2次形式のテータ関数について
概要
虚2次体のray class fieldに関するArtin $L$ 関数の逆メリン変換は合同条件付きの2元2次形式のテータ関数の線形結合となる. 本講演では合同条件付きの2元2次形式のテータ関数について知られている変換公式から出発し,保形形式としてのレベルやカスプでの値を決定する.また実際にArtin $L$ 関数の逆メリン変換として現れる例を紹介する.(木田雅成との共同研究).

講演
寺井伸浩(大分大学)
講演題目
階乗を含む不定方程式について
概要
階乗を含む不定方程式は昔から深く研究されてきた. Erdos-OblathやPollack-Shapiroらにより, 不定方程式 $x^m ± y^m =n!$ ($\gcd(x,y)=1$, $m$≧$3$) は解決され, この形で有名な未解決不定方程式は $x^2-1=n!$ である. この方程式は3つの正の整数解 $(n,x)=(4,5),(5,11),(7,71)$ だけを持つことが予想されている(Brocard-Ramanujan予想). 本講演では, 階乗を含むいくつかの不定方程式を考え, ある条件の下で正の整数解を決定する. また, これらの方程式とBrocard-Ramanujan予想, ABC予想, Wilson商との関係を述べる.
第221回 (平成30年7月19日(木))
講演
講演題目
概要
研究集会「金沢数論ミニ集会2018」と併催.詳細はリンク先をご覧ください.
第220回 (平成30年7月5日(木)18:15~)
講演
門上晃久氏(金沢大学)
講演題目
Reidemeister torsion と円分体(Reidemeister torsion and cyclotomic field)
概要
低次元トポロジーの分野では多くの不変量が定義されているが、その数値としての扱いには様々な姿勢がある。私は、Dehn 手術の研究に Reidemeister torsion という不変量を用いた。3 次元多様体の 1 次元ホモロジー群が有限位数のとき、Reidemeister torsion は円分体に値を取る。従来は(現在でも?)数値を計算機で計算された小数表示の複素数と見ることが多かったが、代数的数として扱うことでより繊細な結果が得られる事がある。自身の結果を通じてそのことをお伝えしたい。
第219回 (平成30年6月21日(木)18:15~)
講演
梅澤瞭太氏(名古屋大多元数理D2)
講演題目
多重ゼータ値とlog-sine積分の関係について
概要
多重ゼータ値とlog-sine積分の関係式が得られたのでそれを紹介し,その後,その関係式が多重ゼータ値へのいくつかの応用を持つことを説明する.また,多重ゼータ値とlog-sinh積分の関係式についても紹介する.
第218回 (平成30年6月7日(木)18:15~)
講演
若槻聡氏(金沢大)
講演題目
コンパクトな算術商上のヘッケ固有値の漸近分布
概要
この講演では,コンパクトな算術商上のヘッケ・マース形式の族に対するラプラス固有値の方向でのヘッケ固有値の漸近分布を与えます.特に我々の族はsphericalだけでなくnon-sphericalなヘッケ・マース形式を含んでいます.ヘッケ固有値の漸近分布の先行研究では,跡公式が重要な役割を果たしました.しかし,現時点で跡公式は我々の族に適用不可能なため,フーリエ積分作用素の手法を基にした新しいアプローチを考案しました.この研究はPablo Ramacher氏との共同研究です.
第217回 (平成30年5月24日(木)18:15~)
講演
当日参加者一同
講演題目
自由討論
概要
特定の講演者を決めず,当日の参加者で,討論を行います.
第216回 (平成30年5月10日(木)18:15~)
講演
谷口哲也(金沢工業大学)
講演題目
Demjanenko行列式の値の大きさの漸近的挙動について
概要
円分体の相対類数を表す行列式の一つとして Demjanenko 行列が知られている.この行列式の値は,係数をランダムに生成した行列式に比べて「非常に大きく」なることを講演者は数値実験にて観察している.数値的に観察した範囲では,Demjanenko行列式の値がHadamardの不等式の上限の約96%程度の桁数となり,平均からのずれは標準偏差の4倍以上にも及んでいる.
この「行列式の値が大きい」という現象は実学にも応用できる可能性があると講演者は考えている.実際,実験計画法では実験効率を上げるために,$\pm1$ 成分の行列式で値が大きなものが必要とされている.
本講演では,素数 $p$ 円分体の場合について Demjanenko 行列などの行列式の値を Hadamard の bound と比較して,$p$ を大きくしたときの漸近的挙動について述べたい.
第215回 (平成30年4月26日(木)18:15~)
講演
木村巌(富山大学大学院理工学研究部)
講演題目
巡回3次体の$p$進単数基準の分布について(after Hofmann-Zhang)
概要
T. Hofmann-Y. Zhang (J. Number Theory 169 (2016), 86-102)は,3次巡回体 (判別式$10^{16}$以下)の$p$進単数基準($p < 100$)とその$p$進付値を計 算した.彼らは,この$p$進単数基準の$p$進付値の分布が,$p$進単数基準の 定義に現れる行列が(当然必要になる仮定を満たす)ランダム行列であるとい う仮説によりよく説明できることを観察し,予想として定式化した.
今回は,彼らの結果と,計算に必要になる$p$進単数基準の計算法(C. Fieker and Y. Zhang, LMS J. Comput. Math. 19 (2016), no. 1, 217-228)の概略を解 説する.
第214回 (平成30年4月12日(木)18:15~)
講演
平林幹人氏(金沢工業大学)
講演題目
A generalization of Jakubec's formula related to the multiplication threorem for Bernoulli polynomials
概要
Last year Jakubec gave a formula for the relative class number of the $p$-th cyclotomic field, $p$ odd prime, by using a determinant related to the multiplication threorem for Bernoulli polynomials. In this talk we generalize his formula to any cyclotomic field.

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