北陸数論セミナー過去の記録(平成29年度・2017年度)

第213回 (平成29年12月14日(木)18:45〜)
講演
村上 和明 氏(慶應義塾大学)
講演題目
$\lambda$-不変量が3である岩澤加群とSelmer群の同型類を決定する新しい不変量について
概要
$p$を奇素数, $\mathbb{Z}_p$を$p$進整数環とする。 岩澤理論において$\mathbb{Z}_p$上のべき級数環が作用する有限生成なねじれ加群 (かつ$\mathbb{Z}_p$-加群として自由なもの)は重要な研究対象である。 これらの加群のうち、特性多項式が2次式であるものは 高次 Fitting ideal でその同型類が決まることが知られている。 しかし、特性多項式が3次式以上の場合では、高次 Fitting ideal だけでは 同型類が決定されないこともわかっている。 講演では特性多項式が3次の場合に新たな不変量を一つ定義し、 その不変量と高次 Fitting ideal によって同型類が決定されることを述べる。 虚二次体の円分$\mathbb{Z}_p$-拡大に付随する岩澤加群と 楕円曲線に付随するSelmer群の同型類を決定する応用例を中心に講演を進めるが、 時間の許す限り証明も述べる予定である。
第212回 (平成29年11月9日(木)18:50〜)
(開始時間がいつもと違います).
講演
谷口 哲也氏(金沢工業大学)
講演題目
円分体の相対類数の行列式公式の値の大きさ,特にDemjanenko行列と距離行列について
概要
円分体の相対類数の行列式公式としてDemjanenko 行列,Maillet行列など多数知られているが,これらの行列式の値は係数をランダムに生成して配置した行列式に比べ「極端に大きい」ことを数値的に観察している.例えばDemjanenko行列の場合は,その値がHadamardの不等式の上限の約96%程度の桁数となり,平均からのずれは標準偏差の4倍以上にも及ぶ. この「行列式の値が大きい」という現象は,たとえば実験計画法などの実学的な応用につながると講演者は考えている(実験計画法では実験効率を上げるために,±1 成分の行列で行列式値が大きなものが利用される).
本講演では±1成分のDemjanenko行列から得られる球面上の点の配置に関する数値実験結果を報告する.とくに「ランダムに係数を生成した行列」「Demjanenko行列」「Hadamard行列」を,距離行列と対応付けて比較した結果について報告したい.
第211回 (平成29年10月26日(木)18:15〜)
講演
藤井 俊氏(金沢工業大学)
講演題目
ある虚二次体の円分的$\mathbb{Z}_3$拡大上の最大不分岐pro-$3$ガロワ拡大の構造について
概要
円分$\mathbb{Z}_p$拡大上で非可換不分岐$p$拡大を扱う研究は、尾崎氏によって非アーベル岩澤類数の証明がなされたのち、具体的なガロワ群 $G$ の構造に興味がもたれるようになった.
一つの問題として、$G$ は非可換自由pro-$p$群にならないのではないか、というものがある.
本講演では状況証拠の一つとして、素数3が分解するある範囲の虚二次体について、上記の問題は肯定的であることについて話す.この内容は、4/27の講演の、別の側面からの話である.
第210回 (平成29年10月12日(木)18:15〜)
講演
立谷 洋平氏(弘前大学)
講演題目
ヤコビ・テータ関数の特殊値について
概要
本講演の前半では、ヤコビ・テータ関数およびテータ零値の主要な性質を述べ、 それらの特殊値の無理性、超越性、代数的独立性などに関する先行結果について紹介する。
また後半では、テータ零値の特殊値の代数的独立性に関して得られた最近の結果について報告する(Carsten Elsner氏との共同研究)。
第209回 (平成29年8月3日(木)18:15〜)
講演
岸康弘氏(愛知教育大)
講演題目
各偶数周期の最小元が持つ性質について
概要
本研究の目的は, ある2次無理数の連分数展開の周期を使って実2次体全体を分類し,各周期ごとに実2次体の類数を調べることである.とくに各偶数周期の最小元には特徴的な性質が見られ,その中の一つに「$2\leq\ell\leq 73478$の範囲にある偶数$\ell$に対し,周期$\ell$の最小元$d_{\ell}$は類数1の実2次体${\mathbb Q}(\sqrt{d_{\ell}})$を与える」という数値結果がある.本講演では,各偶数周期の最小元が持つ性質について,これまでに得られていた「極小型」,「ELE型」について解説し,さらに, 最近得られた結果を紹介する.
本講演は,学習院大学の河本史紀氏,名古屋大学の鈴木浩志氏,名城大学の冨田耕史氏との共同研究です.
第208回 (平成29年7月20日(木)18:15〜)
講演
伊東杏希子氏(東京情報大)
講演題目
数列と二次体の類数の可除性、シンプレクティック埋め込み問題について
概要
数列や連分数の性質は、数論や幾何学など様々な分野に応用される。本講演の前半では、数論への応用として、二次体の類数の可除性に関する最近の講演者の結果を報告する。後半では、シンプレクティック幾何学への応用として、シンプレクティックトーリック多様体における埋め込み問題に関する最近の講演者の結果を報告する。
第207回 (平成29年7月6日(木)18:15〜)
講演
M. Kimball氏(University of Oklahoma)
講演題目
Atkin-Lehner signs and congruences mod 2
概要
In the first part of the talk, I will explain some things about the distribution of Atkin-Lehner signs for modular forms fixed level and weight. In the second part of the talk, I will explain how the distribution of Atkin-Lehner signs is related to the existence of many congruences mod 2 within a fixed space of modular forms.
第206回 (平成29年6月22日(木)18:15〜)
講演
若槻聡氏(金沢大)
講演題目
Equivariant subconvex bounds for Hecke-Maass forms
概要
In this talk, we will discuss subconvex bounds for Hecke-Maass forms on semisimple Lie groups. We generalize existing spherical subconvex bounds in the eigenvalue aspect to non-spherical situations for cocompact lattices. This is a joint work with Pablo Ramacher.
第205回 (平成29年6月8日(木)18:15〜)
講演
小松亨氏(東京理科大)
講演題目
3次巡回体のある単数方程式について
概要
有限次代数体 $K$の単数群 $E_K$ と, 正の整数 $m$ に対して, 1次方程式 $x-y=m$ の単数解 $(x,y)$ からなる集合 $$U_{K,m}=\{ (x,y)\in E_K\times E_K \mid x-y=m \}$$ は有限集合であることがよく知られている。 実2次体に関しては次が簡単にわかる: 固定した実2次体 $K$ と固定した整数 $m>2$ に対して $U_{K,m}$ は高々1元集合。 固定した実2次体 $K$ に対して, 和集合 $\bigcup_{m\in\mathbf{N}} U_{K,m}$ は無限集合。 固定した整数 $m > 2$に対して, 和集合 $\bigcup_{K: \text{実2次体}} U_{K,m}$ は2元集合。 本講演では, 上記のような内容を 3次巡回体のときに考察して得られた結果 および予測される現象を紹介する。
第204回 (平成29年5月25日(木)18:15〜)
講演
平林幹人氏(金沢工業大)
講演題目
Maillet 行列に関連する問題について ――― I. Kuribayashiの論文紹介
概要
2008年,I. Kuribayashiは,いくつかのcotangentの値が有理数体上線形独立であることを示した.その結果は,Maillet 行列に類似した行列の階数を見ることで得られる.特別の場合,その行列は Maillet 行列になる.
第203回 (平成29年5月11日(木)18:15〜)
講演
谷口哲也氏(金沢工業大)
講演題目
円分体の相対類数の行列式公式の値の大きさについて
概要
円分体の相対類数の行列式公式は,Demjanenko 行列,Maillet行列など数多く知られている.これらの行列式の値は,係数をランダムに生成した行列式に比べて「非常に大きく」なることを講演者は数値実験にて観察している.例えばDemjanenko行列の場合は,その値がHadamardの不等式の上限の約96%程度の桁数となり,平均からのずれは標準偏差の4倍以上にも及ぶ.
この「行列式の値が大きい」という現象は実学にも応用できる可能性があると講演者は考えている.実際,実験計画法では実験効率を上げるために,±1 成分の行列式で値が大きなものが必要とされている.
本講演は,第197回北陸数論セミナーでの講演の続きにあたる.Demjanenko 行列などの行列式の値が,係数をランダムに生成した行列式の値の集合の中で,どの程度平均からずれているのか,行列式の分布の状況などを紹介するとともに,今回は新たに「discrepancy」の観点からこの現象を見直したい.
第202回 (平成29年4月27日(木)18:15〜)
講演
藤井俊氏(金沢工業大)
講演題目
虚二次体上の一般Greenberg予想について
概要
Minaridi氏による虚二次体上の一般Greenberg予想の研究以来,講演者を含めた幾人かの研究者によって研究が進められてきた.本講演では,特に素数が虚二次体で分解する場合について,現状と現在講演者が考えている研究についてお話ししたい.
第201回 (平成29年4月13日(木)18:15〜)
講演
木村巌(富山大)
講演題目
Fricke群上のモジュラー形式の零点と関連する話題
概要
レベル$2$のFricke群上のEisenstein級数に微小な摂動項を加えたモジュラー形式の零点が,基本領域の境界である円周上にあるというたぐいの結果を紹介する.重さの法$8$での合同条件により,すべての零点の位置を特定できる場合,一つ以外は特定できる場合がある.

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