2017年度第25回整数論サマースクール「楕円曲線とモジュラー形式の計算」

下記要領で2017年整数論サマースクールを開催いたしますのでご案内申し上げます.

期日・会場など

期日
2017年8月28日(月)~2017年9月1日(金)
会場
伊香保温泉塚越屋七兵衛
世話人
木村巌(富山大),横山俊一(九州大)
対象
原則として数学系の大学院に属する学生および大学・高専等の数学教員.
参加費
詳細未定ですが,3~4人部屋での宿泊を原則としております. 全日程参加の場合で,4~5.5万円程度を予定しています. 職をお持ちの方と学生の方とで傾斜を付ける予定です.
報告集
報告集の節をご覧ください.
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テーマ

今回の整数論サマースクールのテーマは「楕円曲線とモジュラー形式の計算」です.内容は主に3つのパートにわけられ,1. 有限体,有理数体,代数体上の楕円曲線の計算,2. 楕円モジュラー形式に付随する2次元法-$l$ Galois表現の計算,3. Hilbertモジュラー形式の計算や重さ1のモジュラー形式に伴う2次元Artin表現の計算などの話題,を予定しています.また,数学的な背景やアルゴリズムの理解と,個別のソフトウェアの具体的な操作のそれぞれについてバランスよく解説を用意したいと思います.

プログラム

講演者は内田幸寛さん(首都大),小澤友美さん(東北大),小笠原健さん(獨協医大),木村巌(富山大),工藤桃成さん(九大),高井勇輝さん(理研/慶応),安田雅哉さん(九大),横山俊一(九大),吉川祥さん(学習院)を予定しております.

タイムテーブル
28(月)29(火)30(水)31(木)9/1(金)
1吉川高井小澤小笠原
2プレセミナー横山高井小澤小笠原
3工藤木村自由討論木村
4工藤・安田吉川自由討論内田
5安田横山自由討論内田

1限: 9:30--10:45, 2限: 11:00--12:15, 3限: 14:00--15:15, 4限: 15:30--16:45, 5限: 17:00--18:15.

講演タイトル・概要

プレセミナー,木村「コンピュータの上での数学・数論」
コンピュータを使った数学,特に数論の計算が,実際にはどのように行われるのかを概説する.多倍長整数・任意精度の浮動小数点数などから,多項式環,代数体とそのイデアル類群などが,コンピュータではどのように実現され計算されているのかを解説する.最後に,虚2次体の類体を例にとって,計算の理論的な概説と(PARI/GPによる)計算例を提示する.
(参考文献:H. Cohen, A Course in Computational Algebraic Number Theory, GTM 138, --, Advanced Topics in Computational Number Theory, GTM 193.)
月3,4途中,工藤「体上の楕円曲線の一般論」
本講演では,楕円曲線の定義や性質及び関連する概念について概説する.特に,本講演の次の講演以降で重要となる事項(楕円曲線の有理点のなす群の構造,モジュラー曲線の定義など)について重点的に解説したい.
月4途中,5, 安田「有限体上の楕円曲線に関連した計算問題」
有限体上の楕円曲線の基本的な理論を紹介したのち,有限体上の楕円曲線の位数計算のSEAアルゴリズムを紹介する(PARI/GPで実演を行う予定).また,時間があれば特殊な楕円曲線暗号の解読手法を紹介する.
火1,吉川「代数体上の楕円曲線」
代数体上の楕円曲線について重要な対象は,その有理点全体からなるMordell-Weil群(MW群)である.この講演では、MW群を決定するための手法「descent」について解説をする.また,楕円曲線に付随するL関数の特殊値とMW群の階数との関係についても述べる.
火2,横山「楕円曲線の計算法入門:実践編」
有理数体上の楕円曲線に纏わる計算を CAS(計算代数システム)上で行う術を解説する.また,一般の代数体上の楕円曲線の計算についても紹介する.なお,この講演では Magma を CAS として用いるが,適宜PARI/GP や SageMath/CoCalc 等を用いた場合の扱い方についても補足する予定である.
火3, 木村「楕円モジュラー形式の導入」
モジュラー形式,モジュラーシンボル,Hecke環など基本的な対象を導入する.計算という観点から,それらが有限の情報で規定されるということに重点を置いて説明する.
火4, 吉川「楕円モジュラー形式とGalois表現の基礎」
Hecke固有形式が与えられると,有理数体の絶対Galois群の2次元表現(Galois表現)が得られる.この講演では,「Galois表現とはなにか?」,「なぜGalois表現を考えたいのか?」,「Hecke固有形式からどのようにGalois表現を構成するのか?」について解説する.
火5,横山「特別な楕円モジュラー形式の高速計算理論について」
Edixhoven-Couveignes らによる,特別な楕円モジュラー形式の高速計算理論について概説する.この理論では,付随する Galois 表現の高速計算に帰着するテクニックが用いられるが,その際(1) 複素数体 $\mathbb{C}$ 上で近似計算する手法(2) 法 $p$ の世界で計算する手法の何れかが用いられる.本講演では (1) の手法を通して,実際の計算におけるボトルネックとその回避法について解説する.(計算の正当性については,木曜日の講演「モジュラー形式に付随する2次元法$l$Galois表現の計算」にて紹介される予定である.)
水1,2, 高井「Hilbert モジュラー形式の計算」
楕円モジュラー形式の総実化である Hilbert モジュラー形式について, 空間への Hecke 作用などの計算アルゴリズムを解説する. 総実体の次数の parity により, Jacquet-Langlands 対応で帰着させる志村多様体が変わり, それに応じて異なる手法が考案されている. Even のときは Dembélé や Donnelly の方法を, odd のときは Greenberg や Voight による方法を解説する.
(参考文献:Dembélé-Voight, Explicit methods for Hilbert modular forms, Elliptic curves, Hilbert modular forms and Galois deformations, Birkhauser, Basel, 2013, 135--198. arXiv版.)
木1,2, 小澤「重さ1の楕円尖点形式に伴うArtin表現」
Deligne-Serreは,重さ2以上のHecke固有形式に付随するGalois表現を用いて,重さ1のHecke固有形式に伴う2次元Artin表現を構成した.本講演ではその構成について,「重さ2以上の場合に帰着する際に用いるEisenstein級数の合同式」「重さ1の場合に表現の像が有限になる理由」などを中心に解説する.また,付随するArtin表現の像の群構造によって,重さ1のHecke固有形式が「二面体型」「例外型」のいずれかに分類されることを説明する.
(参考文献:Serre, J.-P. Modular forms of weight one and Galois representations (in: Algebraic number fields: $L$-functions and Galois properties (Proc. Sympos., Univ. Durham, Durham, 1975), pp. 193–268, Academic Press, London, 1977))
木3, 木村「モジュラー形式に付随する2次元法$l$Galois表現の計算」
レベル1のHecke固有形式に伴う2次元法$l$表現を,モジュラー曲線のJacobi多様体の有限部分群に実現し,さらに,それを複素数体上の近似計算を使いながら,厳密に計算するEdixhoven-Couveignesらの結果を述べる.
(参考文献:Chapters 8, 12 and 14 of B. Edixhoven, J.-M. Couveignes, eds., Computational Aspects of Modular Forms and Galois Representaions, Annals of Mathematics Studies 176, Princeton University Press, 2011, arXiv:math/0605244
木4, 5,内田「高さとArakelov理論,それらのGalois表現の計算への応用」
ここまで説明されたモジュラー形式に付随するGalois表現の計算では,モジュラー曲線などから定まるある多項式の係数の高さを評価する必要がある.本講演ではArakelov理論を用いたこの高さの評価について概説する.
(参考文献:Chapters 4, 9 and 11 of B. Edixhoven, J.-M. Couveignes, eds., Computational Aspects of Modular Forms and Galois Representaions, Annals of Mathematics Studies 176, Princeton University Press, 2011, arXiv:math/0605244
金1, 2, 小笠原「PARI/GPによる重さ1のモジュラー形式の計算」
重さ1のモジュラー形式をPARI/GPを用いて計算する方法を紹介する.重さ1のモジュラー形式の計算アルゴリズムは,Buzzard,Lauder,Schaefferらによってすでに与えらているが,本講演で紹介する方法はそれとは異なるもので,比較的簡素なものである.PARI/GPの特徴・使い方も含めつつ解説する予定である.
(参考文献:J. P. Serre, Modular forms of weight one and Galois representations, (in: Algebraic number fields: L-functions and Galois properties (Proc. Sympos., Univ. Durham, Durham, 1975), pp. 193–268, Academic Press, London, 1977) (特に,PartIIのsection 8, 9).G. Schaeffer, Hecke stability and weight 1 modular forms. Math. Z. 281(2015), no. 1-2, 159–191. arXiv版.)

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計算機数論用のソフトウェア

計算機数論でよく使われるソフトウェアの公式ウェブページへのリンクです.今回のサマースクール中に言及があるであろうものをピックアップしました.PARI/GP, Sagemathなど無償のソフトウェアは,事前にノートパソコンにインストールしてご参加いただくとより有意義かもしれません.

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参加申し込み

7月5日(水)から参加申し込みを受け付けます.7月11日(火)に参加申し込みを締めきりました.多数のお申し込み,ありがとうございました.

参加費・旅費の補助について

本サマースクールの参加費・旅費につきましては,参加者ご自身でご用意ください.主催者側での補助の用意はございません.

会場までの交通案内

最寄り駅はJR渋川駅です.そこから路線バス(関越交通バス)/タクシーで20分ほどです.路線バスの場合最寄りのバス停は「伊香保温泉前バス停」で,そこから会場まで徒歩で10〜15分です.

バスタ新宿から,高速バス「上州ゆめぐり号」があります.「伊香保石段街」で下車後,会場まで徒歩10分弱です.

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報告集

富山大学機関リポジトリToRepoにて全文公開中です.「楕円曲線とモジュラー形式の計算(第25回整数論サマースクール報告集)」.

更新履歴

2018/10/25
2013年度整数論サマースクールへのリンクを変更.2017年度第25回整数論サマースクール(この回)の報告集をリンク.
2017/08/24
高井さん,小笠原さんの講演に参考文献を追記しました.
2017/08/12
内田さん,木村の講演に参考文献を追記しました.CSSを微調整しました.
2017/08/11
小澤さんの講演に参考文献を追記しました.また,計算ソフトウェアのリンク集を作成しました.
2017/08/01
初日のプレセミナーの担当・タイトル・概要を追加しました.
2017/07/11
参加申し込みを締めきりました.多数のお申し込みありがとうございました.また,締めきり期日よりだいぶ前に受付終了に至りましたこと,申し訳ございませんでした.「テーマ」欄にSiegelモジュラ形式の計算に関する記述がありましたが,今回は直接関係する講演を設定しませんでしたので,削除しました.
2017/07/07
交通案内,参加人数の目安を掲載しました.
2017/07/05
タイムテーブル,講演概要を公開.参加申し込み受付開始.
2017/04/19
このページを公開しました.

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