北陸数論セミナー 過去の記録(平成27年度)

第185回 (平成27年12月17日 18:15〜 )
講演   門上晃久氏(金沢大学理工研究域)
     Geometric realization of $\mathbb{Z}_p$-covering of a 3-manifold not coming from $\mathbb{Z}$-covering
(in progress; discussed with Yasushi Mizusawa and Jun Ueki)
概要   代数的数論と 3 次元多様体論の類似性を語る際、素数で分岐する代数拡大体の対応物は、絡み目で分岐する多様体の被覆空間となる。
特に $\mathbb{Z}_p$-被覆を考えて、類数の増大度に関する岩澤公式に対応する、1 次元ホモロジー群の位数の増大度に関する岩澤型公式を示すのが基本的問題である。
  [作間 (1979)] が 3 次元多様体論の問題として、3 次元多様体の分岐被覆の 1 次元ホモロジー群の位数を論じていたのを、[Hillman-Matei-森下 (2006)] は代数的数論との関連があることを指摘し、岩澤型公式を明示した。[門上-水澤 (2008)] や [植木 (2015)] において、扱われる場合の一般化がなされた。
  最近、植木潤氏は、これまで扱われている $\mathbb{Z}_p$-被覆は $\mathbb{Z}$-被覆由来のものばかりである指摘をし、$\mathbb{Z}$-被覆由来でない $\mathbb{Z}_p$-被覆でも岩澤型公式が同様に成り立つことを示している。そこで、このような $\mathbb{Z}_p$-被覆は空間としてどう実現されるかを考察した。さらにその考察から見えつつあることも話したい。
第184回 (平成27年11月19日 18:15〜 )
講演   野村次郎氏(慶應義塾大学)
      非可換拡大に対するBrumer-Stark予想について
概要   イデアル類群のガロワ加群としての構造とL関数の特殊値との関係について、Brumer-Stark予想が古くから研究されてきた。この予想は代数体のアーベル拡大に対して定式化されているものだが、2010年ごろに、David BurnsとAndreas Nickelによって、非可換拡大に対するBrumer-Stark予想(非可換Brumer-Stark予想)が独立に定式化された。さらに、2014年にはGaelle Dejou と Xavier-Francois Roblotによって、Burnsらとは別方向の非可換拡大への一般化(ガロワBrumer-Stark予想)が定式化されている。
 本講演では、非可換拡大に対するBrumer-Stark予想の二つの定式化を解説し、これまでに知られている結果と講演者によって得られた結果について説明する。
第183回 (平成27年11月5日 18:15〜 )
講演   藤井俊氏(金沢工業大学)
      non-CM 総虚体の一般 Greenberg 予想に向けて 
概要    p を素数とする. 代数体 k の最大多重 Z_p 拡大 K 上の最大不分岐アーベルp 拡大のガロワ群 X は,完備群環 Z_p[[Gal(K/k)]] 上 pseudo-null であろうと予想されており, 一般 Greenberg 予想と呼ばれている. k が CM 体のとき, もっとも基本的な状況で予想が示されている.
 本講演では, k が non-CM の場合に生じる困難と, 多くはないが non-CM 総虚 4 次体における成立例について話をしたい.
第182回 (平成27年10月22日 18:15〜 )
講演   山下浩氏(金沢大学人間社会研究域)
       実2次体の partial zeta 関数の s=0での値の計算
概要   類数1の実二次体上で同種が正整数の射類群の射類に対するpartial zeta 関数がs=0で取る値を新谷の方法により計算した結果を紹介する.
第181回 (平成27年10月8日 17:00〜 ) 注:開始時間がいつもと違います
講演   浅井哲也氏(元静岡大学)
      Some finite quotients of PSL2(Z) related to Markov triple vectors 
概要    方程式 F([x,y,z])=x^2+y^2+z^2-3xyz=0 を満たす自然数の三つ組の解ベクトル [x,y,z] を Markov triple vector と呼ぶ.[1,1,1], [1,2,1], [1,5,2], ... に始まる無限の解ベクトルの存在については生成原理とともによく知られている.
 Markov triple vectors 全体の集合を M で表し,他方で,各 N>1 について合同方程式 F([x,y,z])\equiv 0 (mod N) を満たす (Z/NZ)^3 のベクトル [x,y,z](ただし明らかな条件 (x,y,z,N)=1, etc. を付す) の全体の集合を M_N で表す.
 このとき,著しい現象が観察される : M から M_N への自然な reduction map は全射のようだ.N<200 までに反例はない.全射性は自明なことではないだろう.しかし,特殊な場合ながら N=3^e のときはこの全射性を証明することができる. 議論の要点は群論的方法である.M, M_N にはモジュラー群 PSL_2(Z) が自然な形で作用する.M_N への作用の可移性が示されるならば目的は果たされることになる.
第180回 (平成27年9月17日 17:00〜 ) 注:開始時間がいつもと違います
講演   寺井伸浩氏(大分大学工学部)
     指数型不定方程式 a^x+b^y=c^z について
概要   a, b, c を固定された1より大きい互いに素な正の整数とする. このとき, (a,b,c) のあるいくつかの場合を除けば, 指数型不定方程式 a^x + b^y = c^z は高々一つの正の整数解(x,y,z) を持つ, という予想が知られている. この予想は, ピタゴラス数に関するJesmanowicz予想の一般化である.

この講演では, 指数型不定方程式
   (3pm^2-1)^x+(p(p-3)m^2+1)^y=(pm)^z
は, m,p に関するいくつかの条件の下で, ただ一つの正の整数解(x,y,z)=(1,1,2) を持つことを示す. 特に, p=5 のとき, 指数型不定方程式 (15m^2-1)^x+(10m^2+1)^y=(5m)^z は条件なしに正の整数解 (x,y,z)=(1,1,2) を持つことを示す.
その証明は, 二つの対数のlinear formsの評価に関する“Laurentの定理”と“Bugeaudの定理”による.
第179回 (平成27年7月23日 18:15〜) 
講演   齋藤正顕氏(早稲田大学グローバルエデュケーションセンター)
      Cohen のマース形式
概要   Andrews, Dyson, Hickerson は 1988 年の論文で,ある2つ q-級数(モックテータ級数に似た級数)を調べ,そのフーリエ係数に関する等式として「整数の分割の個数」及び「Pell 方程式の解の個数」を用いた2通りの表示を得た. 2つの q-級数のうちの1つは,Ramanujan の Lost Notebook に記載されたものである.
  Andrews らの結果に関連し, Henri Cohen は 1988年の論文で,上記 2つの q-級数のフーリエ係数が,正則部, 非正則部に現れるような重さ 0 固有値 1/4 のマース形式を与えた. Cohen のマース形式は,実2次体を中間体として含むような,ある2面体拡大の2次元偶ガロア表現に付随するマース形式として与えられる. 本講演では, Cohen のマース形式を含むマース形式の族について報告する.
第178回 (平成27年7月9日 18:15〜) 
講演   高井勇輝氏(慶應義塾大学)
     Manin constant の総実化について
概要   有理数体上の楕円曲線 E の N\'eron differential と保型性を介して E に対応する保型形式から定まる E 上の不変微分形式の間には有理数倍のズレが生じます. このズレは Manin constant と呼ばれています. Manin constant は 1 か -1 であると Manin により予想され, Mazur や Edixhoven らによりレベルとの関係や整数性などが示されています.
  本講演では, Agashe-Ribet-Stein による Mazur らの結果の一般係数楕円保型形式への拡張をヒントに, Hilbert モジュラー形式に付随するアーベル多様体に対して Manin constant を定義し, 志村曲線の性質からレベルとの関係を調べる試みについてお話しします.
第177回 (平成27年6月25日 18:15〜) 
講演   藤井俊氏(金沢工業大学)
     ''On Greenberg's generalized conjecture for an infinite class of number fields'' by Thong Nguyen Quang Do の紹介
概要  最近,Nguyen Quang Do 氏によって書かれた,上記タイトルの preprint の紹介をします.総虚体上の一般 Greenberg 予想に関して,円分的 Z_p 拡大における Gross 予想との関係が述べられており,一般 Greenberg 予想の困難の一つを浮き彫りにした内容と言えます.また,Gross 予想の下,(p,-1)-regular field と呼ばれる代数体に対して,一般 Greenberg 予想が成立することが示されています.
第176回 (平成27年6月11日 18:15〜) 
講演   岡崎龍太郎氏
      On representation of unity by quartic form and maximal height algorithm for reduction of quartic forms
概要   Let F=F(X,Y) be a binary quartic form with at least three distinct complex linear factors.
A Thue equation is the equation F(x,y) = m in unknown integers x and y, where m is a given non-zero integer. A celebrated Theorem of Thue states the set of solutions to a Thue equation is finite.

In this talk, we discuss the case in which m=1 and F is quartic, under the additional condition that F is free of any real linear factors.

Completing the work of Nagell, we prove the cardinaliry of the solution set modulo multiplication by +1, -1 is at most 3, under a technical condition. The technical condition is mild in the sense we only miss finitely many forms F, which we can enumerate.

In the proof, reduced quartic forms under a certain "maximal height algorithm" appear.
第175回 (平成27年5月28日 18:15〜) 
講演   Kimball Martin氏(University of Oklahoma)
      Congruences and nonvanishing of twisted L-values
概要  Central L-values of elliptic curves, at least conjecturally, contain important arithmetic data of these curves. I will explain how one can study the arithmetic of these central L-values in families of quadratic twists by associating elliptic curves with 3 kinds of modular forms: integral weight, half-integral weight, and quaternionic. The half-integral weight and quaternionc forms yield two different arithmetic interpretations of these central L-values. We will look at specific examples and see how, at least in certain families, one can get very explicit information about nonvanishing of L-values and congruences mod p. Finally, I will sketch some conjectural generalizations to higher dimensions.
第174回 (平成27年5月14日 18:15〜) 
講演   平林幹人氏(金沢工業大学)
      Hasseの本 「アーベル体の類数について」 についての注意
概要  Hasse の本 「アーベル体の類数について」 において,定理 29 が間違いであることが既によく知られている。さらに, 虚アーベル体の類数の2-rank の公式(52 ページ)が間違いであると,最近,Lemmermeyer 氏から知らされた.今回はこの紹介を行う.
第173回 (平成27年4月30日 18:15〜) 
講演   津村博文氏(首都大学東京理工学研究科)
      ポリベルヌーイ数に付随するゼータ関数について
概要  Riemann ゼータ関数の一般化として、ポリベルヌーイ数を負の整数点での値にもつようなゼータ関数を構成し、その解析的および代数的な性質を考察する。この関数は、この分野で重要な Arakawa-Kaneko \xi-ゼータ関数と対をなすものであり、多重ゼータ関数の線形和であらわされるため、正の整数点での考察から、多重ゼータ値や多重ゼータスター値の研究への大きな寄与が得られる。さらにこの関数の負の整数点での考察から、良く知られたポリベルヌーイ数の「双対公式」の自然な一般化(multi-index version)が得られる。これらの結果についてなるべく基礎的な部分からの解説を試みる。
 尚、本研究は九州大学の金子昌信氏との共同研究である。
第172回 (平成27年4月16日 18:15〜) 
講演   大浦学氏(金沢大学理工研究域)
      有限群の不変式とモジュラー形式
概要  有限(行列)群が自然に多項式環に作用する場合の不変式環を考えてみます。
その不変式環が(重み付き)多項式環となるような群は37のクラスに分けられています。それは Shephard-Todd により1950年代中ごろにそれまでの知られた結果を集大成する形で行われました。例えば No.1 は対称群、No.37 はE8型ワイル群です。我々が興味を持つのは No.8 と No.9 にあたる群で、位数はそれぞれ 96、192 です。この辺りにある組合せ論とモジュラー形式の話しをしたいと思います。