北陸数論セミナー 過去の記録(平成23年度)

第130回 (平成24年3月8日 18:15〜)
講演 山本現氏(東京電機大学)
      素数のまつわり数とZ_p拡大について
概要   nを2以上の自然数とするとき, 相異なる素数 p1, p2 ≡ 1 (mod n) に対して, mod n のまつわり数 lk_n(p1, p2) が森下昌紀氏により定義されている.
  この講演では, 素数 p と素数 p1 ≡ 1 (mod p) に対して,mod p のまつわり数 lk_p(p, p1), lk_p(p1, p) を定義し,これをアーベルp拡大体の円分 Z_p 拡大に関する問題に応用する.特にpを奇素数とするとき, 以前講演者により得られたアーベルp拡大体で, Z_p拡大における岩澤加群が自明になるための条件がまつわり数を用いて簡単に記述されることを紹介する.
第129回 (平成24年2月23日 18:15〜)
講演 天野郁弥氏(九州大学)
     64次のべき零拡大と4重べき剰余記号
概要   1939年、L. Redeiは有理数体上のある8次2面体拡大における素数の分解法則を記述するトリプル記号を導入した。森下昌紀氏は、結び目と素数の類似の視点から、Redeiのトリプル記号を3重まつわり数(Milnor不変量)として解釈し、一般のn重べき剰余記号は、ある2^N 次(N=n(n-1)/2)のべき零拡大において実現されるべきであることを提起した。
 この講演では、64次のべき零拡大の具体的な構成を与え、4重べき剰余記号を導入する。さらに、我々の4重べき剰余記号が森下氏の4重Milnor不変量に一致すること、すなわち、4重まつわり数の数論的類似であることを示す。
第128回 (平成23年12月15日 18:15〜)
講演 木村巌氏(富山大学大学院理工研究部)
     Redeiの公式の結び目と素数の視点からの紹介
概要    森下昌紀先生の著書「結び目と素数」から、Redeiによる2次体のイデアル類群の4ランク公式の証明並びに、関連する話題についてお話しします.
第127回 (平成23年11月25日 18:15〜)
講演 野村明人氏(金沢大学理工研究域)
     巡回体上の不分岐非アーベルp^3次拡大の存在について
概要   kをある種の素数次巡回体とし,pを奇素数とする。位数がp^3の非アーベル群は2種類ある。これらの群をガロア群に持つようなk上の不分岐拡大の存在・非存在について考察する。
第126回 (平成23年 11月17日 16:00〜)
講演1 満保雅浩氏(金沢大学理工研究域電子情報学系) 16:00〜
   暗号要素問題の計算量理論的な関係性について
概要   暗号方式の安全性を評価する一つの手法として活用される計算量理論的な帰着関係を取り上げ、暗号で取り上げられる問題の困難性について議論する。
 
講演2 境隆一氏(大阪電気通信大学金融経済学部) 17:20〜
      IDベース暗号と双線形写像を用いた暗号
概要    公開鍵暗号の概念を提案したDiffieとHellman が提案した鍵共有法は、送受信者間で公開鍵のやりとりを行った後に二者間の共通鍵を生成する。この送受信者間の公開鍵のやりとりのかわりに、相手のID情報と共通のパラメータから、送受信者間の共通鍵を生成する方式がIDベース鍵共有法である。そして、Diffie-Hellman鍵共法に対してElGamal公開鍵暗号があるのと同様に、IDベース鍵共有法に対してIDベース公開鍵暗号がある。
 本講演では,IDベース鍵共有方法の対称行列を用いた方式、離散対数の落とし戸を用いた方式を概説した後、主として双線形写像を用いたIDベース暗号および、IDベース放送暗号について述べる。
第125回 (平成23年10月27日 18:15〜)
講演 坂田 裕氏(早稲田大学高等学院数学科)
      Jacobi 形式の跡公式とその応用
概要    1変数保型形式からなる空間の次元や( Hecke 加群としての)構造などは,古くから 様々な研究者によって調べられてきた.それらは, 1変数保型形式上に作用するHecke作用素の跡を具体的に書き下す明示式(跡公式)から直ちに導かれる.
   ただ,この明示式は( Eichler-Selberg の研究に始まる数多くの研究によって漸く代数的に明示化なされるなど)非常に複雑な計算過程を辿らなければ得られないため,多変数保型形式上に作用するHecke 作用素の跡公式については(基本的な計算原理を除いて)未だ完成されていない.その後,Skoruppa-Zagier は, Eichler-Selberg の研究を参考にして,level $1$ の Jacobi 形式に作用する Hecke 作用素の跡公式を完成させ,これらのなす空間の構造を完全に決定した.
   この研究から,保型形式と楕円関数の性質を併せ持ち,且つ Siegel 保型形式の Fourier-Jacobi 係数としても現れる Jacobi形式の複雑な構造の一端が明らかにされたといえよう.
 本講演では,Skoruppa-Zagier の結果を拡張・一般化して squarefree level のJacobi 形式に作用する Hecke 作用素の跡公式を与え,これらのなす空間の構造を完全に決定する.また,その応用として, squarefree level の Jacobi 新形式上で,レベルと指数を入れ替える Hecke 対応を具体的に構成する.なお,時間が許せば,素数冪 level の Jacobi 形式からなる空間の Hecke 構造についても言及してみたい.
第124回 (平成23年10月13日 18:15〜)
講演 山田美枝子氏(金沢大学理工研究域)
   円分体の数論の組合せ数学への応用
            -- T. Feng and Q.Xiangの論文紹介
概要    T.FengとQ. Xiangは有限体上にskew Hadamard 差集合の無限系列を構成した。
この構成にはGauss 和とDavenport-Hasseの定理、Stickelbergerの定理が重要な役割を果たしている。実例を含めて紹介する。
第123回 (平成23年7月21日 18:15〜)
講演 野村明人氏(金沢大学理工研究域)
   最小分岐問題(minimal ramification problem)について
概要    pを素数とする。任意の有限p群Gに対して、有理数体上のガロア拡大L/Qで条件
 (1) ガロア群G(L/Q)はGと同型
 (2) L/Qで分岐する素数の個数はGのランクと同じ
を満たすものが存在するか?という問題を、ここでは最小分岐問題と言う。
 本講演では、p群に対する最小分岐問題の歴史的な経緯と2010年のKisilevsky-Sonnの結果を紹介する。
第122回 (平成23年7月7日 18:15〜)
講演 山下浩氏(金沢大学人間社会研究域)
   Brauerの類数関係に現れる単数群の指数について
概要    Brauerの類数関係に現れる単数群の指数の部分を変形することにより,黒田の類数関係を導く C. Walter, Acta Arith. 35(1979) 41-51 での方法が指標関係を少し一般にしても有効であることを紹介する.
第121回 (平成23年6月23日 18:15〜)
講演 塩見大輔氏(名古屋大学多元数理科学研究科)
   The Jacobian of cyclotomic function fields
概要    Cyclotomic function field とはCarlitz, Hayesによって導入された大域関数体の一つで, 有理数体上の円分体と極めて多くの類似点を持っている.
   本講演ではcyclotomic function fieldのJacobi多様体の構造について最近, 得られた結果を紹介する.
  
第120回 (平成23年6月9日 18:15〜)
講演 岸康弘氏(愛知教育大学)
   ある連分数展開を持つ2次無理数と極小型の実2次体について
概要    ガウスの類数1問題に対して、河本‐冨田氏により、『極小型』と呼ばれる実2次体を構成するというアプローチが近年確立された。極小型でない実2次体で類数が1となるものは1つの例外を除くと51個に限ることが彼らにより示されており、従って、類数が1のものを見つけるためには、極小型の実2次体から探す必要があるということになる。
  今回の講演では、特殊な連分数展開を持つようなある2次無理数を紹介し、それらと極小型の実2次体との関連について述べる。
第119回 (平成23年5月26日 18:15〜)
講演 江村恵太氏(北陸先端大   高信頼性組み込みシステムセンター研究員)
     公開鍵暗号の証明可能安全性について
概要    数論的な計算量問題が難しいという仮定の下で, 暗号の安全性を数学的に証明するための手法を簡単な例を用いて紹介する. また, 様々な暗号方式 (IDベース暗号, 時限式暗号, 検索可能公開鍵暗号など)及びこれらの関係性について紹介する
第118回 (平成23年5月12日 18:15〜)
講演 平林幹人氏(金沢工業大学)
      Hasse の第2変形による素数べき分体の相対類数公式
概要   1952 年 Hasse は 「アーベル体の類数について」 の第2章で実アーベル体の類数を2つの方法で表した。第一の方法を虚アーベル体に「適応する」と、Girstmair が1993 年に得た Maillet 行列式による相対類数公式が得られる。第二の方法を素数べき分体に「適応する」と、この体の相対類数がある行列式で表わせる。この行列式の成分はその体で決まる2べき分体の整数である。
第117回 (平成23年 4月28日 18:15〜)
講演 木村巌氏(富山大学大学院理工学研究部)
   Cohen-Lenstra heuristicについてのおはなし
概要 H. Cohenと,H. W. Lenstraによる,2次体のイデアル類群の分布についての予想(1982〜1983頃)を,元の論文に沿って紹介する.
第116回 (平成23年 4月14日 18:15〜)
講演 若槻聡氏(金沢大学数物科学系)
      2元2次形式の空間に関する2次指標のL関数について
概要    伊吹山氏と斎藤氏は有理数体上の2元2次形式の空間と奇素数の導手の2次指標で定義されるL関数が一般ベルヌーイ数とリーマンゼータ関数によって明示的に記述できることを示した。
   本講演では彼らの結果を任意の代数体と二次指標について一般化した公式について話す。この公式は斎藤氏の概均質ゼータ関数の明示的公式に関する仕事から従う。そして、Sp(2)のEndoscopyとの関係について説明する。