北陸数論セミナー 過去の記録(平成21年度)

第102回 (平成22年 2月5日 17:20〜)
講演 Francesco Lemma 氏 (Osaka University)
     Higher regulators, periods and special values of the degree 4
     L-function of GSp(4)
概要 In the classical case of the zeta function of a number field, the special value is given, up to a rational number, by the determinant of the regulator mapping the units of the number field in an euclidean space.
Beilinson's conjectures generalize this formula to the case of the L-function of any pure motive. In our talk, we will present some results towards Beilinson's conjecture for the degree 4 L-function associated to a cuspidal automorphic representation of the symplectic group in four variables GSp(4).


第101回 (平成21年 12月3日 18:15〜)
講演 吉野健一氏(金沢医科大学)
         名作を訪ねてI・・・SiegelからKroneckerへ
概要   「古きを温めて新しきを知る」という格言が有りますが、ここでは「古きを訪ねて、さらに古きを知る」という観点から歴史的に良く知られていたSiegelの論文[85] と[10]の解説、特に[85] を中心に解説をしたいと思います。
  この[85]は今から40数年以上前の論文で、Siegelの論文全体の中では変り種といえるものですが、この2つに共通してSiegelの数学感覚の良さがまさにその中に現れているので取り上げます。Kroneckerの結果が証明の途中に出てくるわけで、次のII(続き)という機会に、Kronecker全集中の数論関係の論文(まず、I,II,IIIにおける該当論文、ついで特にIVのそれ)を中心に話してみる予定です。その折に、Kroneckerの数学がまさにSiegelに大きな影響を与えたと思われる論文なども紹介します。

付記:[10] [85]はSiegel全集における論文番号であり
     [10]は総実代数体の判別式について
     [85]はStarkの定理の証明について
です。


第100回 (平成21年 11月19日 17:30〜)
講演 江上繁樹氏(芝浦工業大学)
      行列の加法数論の諸問題
概要 故三井孝美氏によって創始され、ほとんど独力で研究された対称行列の加法数論について、講演者の得た若干の結果も交えて紹介する。特に、代数体の加法数論との類似性に留意し、同様なところと異なるところについて解説したい。また、残された問題というかこれからやってみたいことについても話したい。
(なお、講演者は加法数論の専門家ではないため、断片的かつ独断的な話になるであろうことはご寛恕いただきたい)


第99回 (平成21年 11月5日 18:15〜)
講演 榎本 文彦氏(金沢大学理工研究域)
       reducible substitution によるタイル張りと Pisot数
概要    記号力学系を用いたタイル張りは数論,フラクタル幾何学などと密接に関係してる.今回は, substitution によりユークリッド空間とリーマン面上にタイル張りを構成し,その間の関係について述べる.


第98回 (平成21年 10月22日 18:15〜)
講演 若槻 聡氏(金沢大学理工研究域)
       カスプ形式の空間の次元に関する合同式
概要    まず既知の結果である、一変数カスプ形式の空間の次元と虚2次体の類数に関連した合同式について紹介する。
   次に、素数レベルpの合同部分群に関する2次のジ−ゲルカスプ形式の空間と一変数カスプ形式の空間の次元に関するある関係式が、レベルpとウェイトによらずに、非負の偶数になる予想について述べる。
   この予想の偶数性から次元と虚2次体の類数に関する合同式を得ることができる。残念ながら類数の合同に関する新しい情報は得られない。この予想の根拠は数値実験による。また、PGSp(2)のアーサー予想を仮定すれば、Local new formの理論を使うことで証明できる。つまり偶数性は、有限素点pにおけるある表現のL-packetの元の数が2であることから来ると考えられる。
   さらに、この予想は関係する保型表現の分岐素点の表現が緩増加であることを支持しているので、ちょっと面白いと思う。


第97回 (平成21年 10月8日 18:15〜)
講演 高井勇輝氏(名古屋大学多元数理科学研究科D3)
       Sturm の定理の実二次体に対する類似
概要 正則な楕円モジュラー形式はその Fourier 係数の最初の幾つかで決まることが知られています. 実際, Murty により, 重さ $k$ でレベル $\Gamma_0(N)$ の正則カスプ形式は最初の $(kN/12) \prod_{p|N}(1+(1/p))$ 個のFourier 係数で決定されることが示されています.
この事実の mod $\ell$ での類似が Sturm によって古典的な方法で示されています.
今講演では, この Sturm の定理の実二次体への Hilbert 保型形式への拡張を紹介します.


第96回 (平成21年 7月30日 18:15〜)
講演 岸康弘氏(福岡教育大学)
       Scholzの不等式とその応用
概要 1932年、Scholzは鏡映関係にある2つの2次体のideal類群の間に、ある関係を与えた。(Scholzの不等式と呼ばれる。)具体的には、3-rankの差が1以下になるというものであるが、3-rankが一致するためには、ある3次体の存在が関係する。
本講演では、そのことについて述べ、その応用として
「ideal類群が部分群としてC(3n)×C(3)を含むような虚2次体の族」
の構成について述べる。


第95回 (平成21年 7月16日 18:15〜)
講演 林彬氏(金沢工業大学)
       Rabin暗号について
概要 Rabin暗号の原理、一意復号可能性、RSA暗号との比較について述べる。


第94回 (平成21年 7月2日 18:15〜)
講演 三浦崇氏(慶應大学大学院理工学研究科 D1)
       円分体のイデアル類群とStickelbergerイデアルについて
概要   イデアル類群へのガロア群の作用を知ることは重要な問題であり、円分体の場合には古典的結果としてStickelbergerの定理が知られている。
本講演では、円分体のイデアル類群のマイナスパートへのガロア群の作用を詳しく考察し、Stickelbergerイデアルを用いて、Stickelbergerの定理や岩澤主予想の精密化を与える。そしていくつかの応用を述べる。また一般のCM体の場合にも、ある条件下でBrumer予想の精密化を与える結果を紹介する。


第93回 (平成21年 6月18日 18:15〜)
講演 伊東杏希子氏(名古屋大学多元数理科学研究科 D1)
       ある虚二次体の類数の可除性について
概要   与えられた正の数 n について類数が n で割れる虚二次体が無限に存在することは、Nagell, Ankey-Chowla, Mollin などにより示されています。
今回はそれに関連して Mollin の証明で扱われている虚二次体の類数の可除性についての Remark をいくつか紹介したいと思います。

第92回 (平成21年 5月21日 18:15〜)
講演 木村巌氏(富山大学大学院理工学研究部)
    2次体のtame kernelの2部分について
概要   2次体のtame kernelの2部分については,(一般の代数体のtame karnelについての)Tateの2-rank formula以来,Conner-Hurrelbrink, Qin Hourong, Qin Yue,Vazzanaらによる多数の研究がある.これらを,2次体のtame kernelの2部分に関する支配体の構成という観点から整理する.

第91回 (平成21年 5月7日 18:15〜)
講演1 野村明人氏(金沢大学理工研究域)
   ある種の(2,2)拡大体のイデアル類群の構造について
概要  イデアル類群がZ/4Zを部分群として含むような(2,2)拡大の構成について紹介する。証明は、代数体の埋め込み問題の一般論を用い、4次不分岐巡回拡大の存在を示すことにより行う。
 
講演2 山下浩氏(金沢大学人間社会研究域)
      Unit indexについてのLemmermeyerの定理について
概要    前回の平林先生のUnit index の講演に関連して,Lemmermeyer; Ideal class groups of cyclotomic number fields I, Acta Arith. LXXII.4(1995), Theorem 1では2べき分体の最大実部分体の分岐素イデアルとUnit indexの関係が述べられ,Unit indexが2であるための必要十分条件が与えられている.この定理の紹介をし簡単な注意をする.

第90回 (平成21年 4月23日 18:15〜)
講演 平林幹人氏(金沢工業大学)
   虚2次体の合併体の単数指数の決定法について
概要  虚アーベル体の単数指数の値は 1 あるいは 2 であるが、この判定を一般的に行うことは難しい問題である。Hasse は「アーベル体の類数について」の中で少しの特別な体での判定法を与えている。
 本講演で、2、3、4個の虚2次体の合併体の単数指数を、その実2次部分体の基本単数で判定する方法を示す。