北陸数論セミナー 過去の記録(平成14年度)
第15回(平成15年3月6日) | ||
講 演 | 山下 浩(金沢学院大学) | |
CM体のp類数公式についてU | ||
概 要 | 総実代数体kの虚アーベル拡大Fの相対類群のp部分をCとする. これをガロア群のZp係数群環上の加群と考えて, 直既約分解する. 直既約成分は群環のべき等元から定義され, これはガロア群の指標と対応している. この指標がp上のどの素点に関する分解群に制限しても, 自明にならなければ, CM体の相対類数公式をCの各直和成分に対して, 細分化できることは, genus theoryを用いて証明できる. 指標が自明になるような素点がある場合には, 細分化できるかどうかは, Fの円分Zp拡大に関する genus groupとFのイデアル類群のなかでpの素因子が生成する部分群の位数がある関係式を満たしているかに帰着される. |
第14回(平成14年12月19日) | ||
講 演 | 今野 和子(学振特別研究員、京都大学) | |
$p$ 進ユニタリ群 $U(3,1)$ の誘導表現 | ||
概 要 | $p$ 進体上の代数群の表現論の基礎部分に関する簡潔な解説の後,$U(3,1)$ の極大放物部分群からの誘導表現の可約性に関する講演者自身の結果が紹介された。Plancherel 測度の具体的な計算は,$U(2,2)$ の誘導表現の Plancherel 測度(K.Konno; J. reine angew. Math. 540, 2001) へ帰着されるが、その際(大域的)清水-Jacquet-Langlands 対応が効果的に用いられる。 |
第13回(平成14年11月28日) | ||
講 演 | 岸 康弘(学振特別研究員、都立大) | |
Frobenius-拡大を生成する多項式の構成とその応用 | ||
概 要 | 有理数体上$p(p-1)$次のFrobenius-拡大を生成する多項式の構成法を紹介した。本講演では、特に、この多項式により与えられる拡大のガロア群(Frobenius-群)の生成元たちが持つ性質について詳しく述べた。最後に、今回与えた多項式を利用して、イデアル類群の$p$-ランクが2以上となる$p-1$次巡回体の構成法を与え、具体例とし$p=5、7$ の場合の計算例を与えた。 |
第12回(平成14年11月14日) | ||
講 演 | 吉野 健一(金沢医科大学) | |
3次巡回体と4次巡回体の単数群の基本単数の計算について | ||
概 要 | 3次巡回体と4次巡回体の基本単数に関するHasseの論文(1948年)のアイディアの紹介とMinkowski 単数を持つ実ガロア体についての紹介が行われた。またコンピュータによる実装を念頭においたMinkowski単数の計算法も紹介された。 |
第11回(平成14年10月17日) | ||
講 演 | 平林 幹人(金沢工業大学) | |
行列式による虚アーベル体の相対類数公式についての一つの注意と 最近の Kucera の論文の紹介 |
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概 要 | 2000年、津村氏は虚アーベル体 $K$ の円分的 ${\bf Z}_p$-拡大の $p^n$ 次部分体$K_n$ の相対類数の公式を $n$ をパラメータとして表した。 この公式で $n=0$ とすると、丁度これまでの $K=K_0$の相対類数の公式と一致する。 講演者は、津村氏の公式を一般化したが(2001年)、この式で$n=0$ とすると、これまでの $K=K_0$の公式とは一般に一致しない。本講演では、この"差"について話した。 また、最近 Kucera 氏が、パラメータ $n$ を用いてはいないが、上記の公式を一般化したので、これを紹介した。 |
第10回(平成14年10月3日) | ||
講 演 | 野村 明人(金沢大学工学部) | |
ガロア拡大体のイデアル類群の構造について | ||
概 要 | ガロア拡大体のイデアル類群のrankはガロア群の構造により制限を受ける。ここではCornell-Rosen(J. Number Theory 1981) および Komatsu-Nakano(Nagoya J. 2001) による G-加群の構造定理のアイディアについて紹介を行った。 |
第9回(平成14年8月2日) | ||
講 演 | 林 芳樹 | |
レベル$N$重さ$2k$の尖点形式の$L$関数の値を表すある保型形式と ヤコビ形式のフーリエ係数 |
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概 要 | Gross-Kohnen-Zagier (Math. Ann. 1987) は、modular curve 上の Heegner divisor のheight paring の値を、保型L関数の導関数の特殊値・Fourier 係数と結び付ける深い結果である。この定理の背景まで込めた丁寧な解説と、講演者自身による一般化についての説明が行われた。 |
第8回(平成14年7月17日) | ||
講 演 | 菅野 孝史(金沢大学理学部) | |
ヤコビ形式入門 | ||
概 要 | ヤコビ形式は、ジーゲル保型形式の部分フーリエ展開係数として自然な形で現れる。genus 1 の場合の応用として、テータリフトに関する結果と、青木宏樹氏による井草の定理の別証を紹介した。 |
第7回(平成14年7月3日) | ||
講 演 | 林 彬(金沢工業大学) | |
公開鍵暗号の原理と諸問題 | ||
概 要 | 秘密鍵暗号と公開鍵暗号の原理および特徴についての解説。公開鍵暗号の中でも特に(1)ナップザック暗号の解読法 (2)RSA暗号の計算速度に関する問題点とその解決法について詳しい解説が行われた。ナップザック暗号は数論的な問題と関係しているようで興味深い。 |
第6回(平成14年6月19日) | ||
講 演 | 山下 浩(金沢学院大学) | |
CM体のp類数公式について | ||
概 要 | p次円分体の相対類数とベルヌーイ数のpでの可徐性に関するリベの定理の証明を、岩澤理論の主定理を使う方法とオイラーシステムを使う方法について紹介した。 |
第5回(平成14年6月5日) | ||
講 演 | 吉野 健一(金沢医科大学) | |
実 $p^r$ 円分体の単数群の円単数部分群による商の $\ell$-ランクの 決定について (金沢工大 小山陽一氏との共同研究) |
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概 要 | p分体の最大実部分体の類数の$\ell$可除性に関するKummerのアイデアおよびその一般化として得られる小山ー吉野の判定条件の解説を行った。小山ー吉野の判定条件は有限体上の多項式の計算で行うためコンピュータによる計算に適している。講演ではアルゴリズムや数値例に関する説明も行われた。 |
第4回(平成14年5月29日) | ||
講 演 | 木村 巌(富山大学理学部) | |
Pari-GPの紹介 | ||
概 要 | 「Pari-GPでどのような計算ができるか?」について実演しながらの紹介を行った。多項式のガロア群の計算、代数体の類数や単数の計算など次数等に制限があるものの手軽に計算できて便利である。 |
第3回(平成14年5月15日) | ||
講 演 | 江上繁樹(富山大学工学部) | |
多重ゼータ関数について | ||
概 要 | 凸多面体内の格子点に関するEhrhartの定理の紹介および証明を行った。また、その応用としてBarnesの多重ゼータによるDedekind和の一般化とその相互法則の解釈について紹介した。 |
第2回(平成14年4月24日) | ||
講 演 | 平林幹人(金沢工業大学) | |
Multiple Dedekind Sums and Relative Class Number Formulae (津村博文氏との共同研究) |
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概 要 | 虚アーベル体の相対類数の $l$ 乗($l$ は自然数)をある多重デデキント和を成分とする行列式で表した。この公式は1955年の Carlitz と Olson の公式、および講演者が前回述べた公式の拡張になっている。証明として、相対類数公式の $l$ 冪を取る方法と、Stickelberger element の表現行列を用いる方法の2つを紹介した。 |
第1回(平成14年4月10日) | ||
講 演 | 野村明人(金沢大学工学部) | |
埋め込み問題とその応用 | ||
概 要 | 代数体の埋め込み問題に関する基本的な結果を復習し、その応用としてR\'{e}dei-Reichardtの古典的な結果に対する埋め込み問題的な証明を紹介した。また2次体上の不分岐拡大の存在に関するLemmermeyerの問題およびその反例について紹介した。 |